夢のガスタービン [ミニチュアモデル]
近い未来には、クルマは電気や水素で走るのが当たり前で、
ガソリンなどという臭くて体に悪そうなエネルギーは姿を消す運命です(笑)
少し前の時代に未来の技術として、圧縮した空気にガソリンを吹き付け点火し、
燃焼した高圧のガスでタービンを駆動して走るクルマの試みがなされました。
なんかすぐにも爆発しそうな怖いクルマですねぇ(笑)
ワタシ的に非常に簡単に言うと吸い込んだ空気を高圧の燃焼ガスに変え、
何倍ものチカラで後方に排出するのがジェットエンジンなら、
そのチカラでタービンを回しタイヤを駆動するのがガスタービン車です。
(詳しいメカニズムが知りたいヒトは自分で調べるように(笑))
簡単な構造で軽量なうえ大きなパワーを得られたので、
このような速度記録車によく使われました。
モデルはCIJ(リプロ)のルノー“流星号”です。
フィアットのTurbina’54です。
一応スピードブレーカーとはなっていますが、
明らかにスポーツカーとしてデザインされており、
将来の可能性を探っていますね。
確かに排気はかなり高温でしたが、
まるでジェットエンジンのような排気口はデザインでしょうね(笑)
モデルはビザールです。
早くからその軽量で構造の簡単な新エンジンに目をつけていたローバーは、
その実力を試すためにBRMとともに’63年のルマン24時間に挑戦します。
タービンカーに対するレギュレーションが無かったため章典外の参加でしたが、
グラハム・ヒルとリッチー・ギンサー(ホンダF1の最初のウイナー)のドライブで、
BRM LM63はフェラーリ等に交じって快走し8位に入りました。
ミニカーはこれもビザール製です。
当時のルマンのコースはシケイン等もなくストレートが長かったのと、
エンジンの構造上レスポンスが非常に悪かったため、
コーナーが少なかったのも味方したのでしょうね。
ちなみにギヤは1速で変速はできませんでした。
スタートで1速に入れると後はひたすらアクセルをコントロールして、
パワーバンドの高回転を保ったのでしょうね。
エンジンブレーキは全然効かなかったので、ブレーキがよくもったと思います。
排気が高温のため陽炎で景色がゆがんでいますね。
ローバーは燃費の改善やエンジンレスポンスの向上などを施し、
’65年にBRM LM65で再度ルマンにチャレンジしました。
この時は正式なエントリーでクラスも2ℓ以下になっています。
ドライバーはベテラン、グラハム・ヒルと当時の新星ジャッキー・スチュアートです。
ところがスタートして間もなくタービンの羽根の一部が折れて、
頼りのストレートスピードが全然伸びません。
このモデルはテストカーだった35号車です。
ドンズバの31号車もビザールから出ていましたが、
油断していたら一瞬で消えてしまいました(泣)
二人のドライバーはストレスに耐えながら残りの周回を走り、
英国車としては最高位の10位でフィニッシュさせたのです。
このマシンは今も走行可能の状態で保存されており、
つい最近もイベントで独特なエンジン音を披露したそうです。
他にもこの新しいパワーユニットに可能性を求めた、
モータースポーツがアメリカにありました。
今でも人気がある伝統のレース「インディ500」は、
オーバルコースを使用した高速レースなので、
連続高速回転に強いガスタービンには向いていたからです。
ミニカーはスパーク製です。
ヘリコプター用のガスタービンエンジンを左側に、
ドライバーの乗るコクピットを右側に配し、
ファーガソンの4WDシステムを組み込んだ個性的な外観は、
スポンサーのクルマ用品総合メーカーSTPの広告塔として、
数多く玩車化されています。
こんなユルいプラ製のオモチャですがカタチはとらえていますね(笑)
コクピットが狭くてヒトが乗れなそうですが、
下の写真を見ると本当に結構タイトですねぇ(笑)
ちなみにこのプラ玩車は日本製です。
名ドライバー、パーネリー・ジョーンズのドライブとはいえ、
予想通り圧倒的なパワーにモノを言わせ後続を大きく引き離しました。
しかしあと数週というところまでトップを走りながら、
残念にも些細なトラブルでリタイヤしてしまいます。
それでも、そのパフォーマンスは見たものを大いに驚かせ、
コマーシャル的にSTPは大成功でした。
メカニックのツナギがいいですねぇ・・・欲しいかも(笑)
これに味をしめたSTPは新しいマシンの開発をロータスに依頼します。
当時、コーリン・チャップマン率いるロータスは不朽の名作タイプ49の活躍で、
文字通り飛ぶ鳥を落とす勢いにあったのです。
常に新しいアイディアを求めていたチャップマンは、
ボディ全体でダウンフォースを生むクサビ型のニューマシンを開発します。
ラジエーターの必要がないガスタービンとはいえ、
リアから見ると完全な箱に見えます(笑)
このモデルはタイプ56と名付けられ、
ジム・クラークの手でテストされたマシンです。
レースでもドライブする予定だったクラークは、
この数日後F2レースで不運にも事故死してしまいます。
代わりにドライブしたグラハム・ヒルも、
あと少しのところでトラブルに見舞われリタイヤしてしまいます。
スパーク製のレジンモデルはこんな悲運なレアモデルまで、
容赦なく、さらに隙間なく網羅してきます(笑)
結構高価なので、懐と相談しているうちに“売り切れ”になってしまうことも・・・
まぁ、おおらかな気持ちでおつきあいすればよいのでしょうが(笑)
インディがダメならF1で・・・と、ヘリのタービンエンジンにまで手を入れてみても、
ヨーロッパのコースでは4WDの重さに泣くことになり、なかなか結果が出ません。
燃料タンクを増量した改良型で当時若手のエマーソン・フィッティバルディが、
イタリアGPで記録した8位が、F1でのベストリザルトでした。
話がガスタービンとは離れてしまいますが、
どうしてもクサビ型のコンセプトがあきらめきれないチャップマンは、
タイプ58というF2マシンを作ります。
ところが4気筒1600ccのFVAエンジンではパワーが足りなくて、
抵抗が大きくてスピードが出ません。
古い米国製のブリキですが、ボディの形がどことなく似ています。
まったく“羽根”のないこの時代のF1は珍しいですね。
結局F1用DFVを載せてもパッとしなくて失敗作?として、
倉庫の中に30年以上放置されていましたが、
最近発見されやっとレストアされたようです。
さて現実的なガスタービン車ももちろんあります。
’63年にクライスラーが実用化を目指して開発したエンジンを載せ、
50台のクライスラー・ガスタービンを生産し、
全国の一般ユーザーに実用テストを行ったのです。
もちろん日本を含め世界21ヶ国を回り環境対応のテストも行いました。
エアコンは付いていなかったそうなので、エンジンの発熱量を考えると、
相当過酷な場所もあったと思われます。
なかなか出来の良いモデルがHWのル-スにありましたので、
こんな時のために仕入れておきました(笑)
リアの奇抜なデザインなどは未来っぽくて面白いですね。
時計が中心にあるタコメーターのアイドリングが22000回転を指していますね。
一般ユーザーにテストを依頼したのでもわかるように、
エンジン始動にコツがいる他はごく普通のATで、
内装も外観ほど“未来的”ではありません(笑)
燃料はガソリンでなくともアルコールやケロシン、軽油等、
燃える液体ならなんでもよいそうです。
’68年にテストが終了すると、2台は自社の保存用に、
9台を博物館などの展示用に、
そして残りはすべてブルドーザーで破壊したそうです。
最後の部分はちょっとショッキングですが。
「安心してください、走っていますよ」(笑)
実は破壊を免れた3台ほどが今でも可動状態で保存されているそうです。
さて、話題は鉄分いっぱいのガスタービン気動車、
キハ391の生い立ちから末路という鉄チャンの涙を誘う内容ですが、
この話はまた機会があれば・・・
2015-12-13 16:16
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ガスタービンの車がある事自体よく知りませんでしたし、さらにその様なマニアックなモデルを造っているミニカー屋さんが存在することが素晴らしいです。
by conta (2015-12-14 01:00)
流星号、ガスタービンだったんだ・・・
ほかにも結構たくさん出ていたのですね!
キハ351のお話も是非。
当方でもガスタービンの連動したいなぁ。
T-80やM1エイブラムスのモデルって持ってたっけ(ヲイ)
by ねこざかな (2015-12-14 04:58)
contaさん
いつもコメントありがとうございます。
日本でもトヨタがガスタービンエンジンを発電に使った、
ハイブリッドカーをテストしていましたね。
このようなニッチマーケットを狙った、
レジン製の精密モデルはたくさん出ています。
見ると欲しくなるおもしろいものばかりなのですが、
高価な買い物なので迷いに迷います(笑)
by 1275GT (2015-12-15 21:08)
ねこざかなさん
いつもコメントありがとうございます。
アメリカの大陸横断の長大な貨物列車を牽く機関車も、
ガスタービンが活躍しています。
あ、それから戦車のエンジンもそうでしたね。
ぜひ、M1の1個師団、有志連合で出動お願いします。
by 1275GT (2015-12-15 21:21)